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【講座レポート】日本酒Lover講座 2月開催:山崎講師による「今が旬、生酒の味わいを識る」
1月からスタートした「日本酒Lover講座」。
こちらの講座は、日本酒ファンの皆様、そして、これから日本酒について学んでいきたい方へ、日本酒の楽しみを知り尽くした講師陣が日本酒のすばらしさや奥深さをお伝えしていく講座です。

2月開催の日本酒Lover講座/テーマ:「今が旬、生酒の味わいを識る」
ご担当頂いたのは、2019年に開催された第1回SAKE DIPLOMAコンクールにおいて、第2位、第2回では1位優勝された山崎和夫講師。
今回は「生酒」をテーマに、生酒とは?また、生酒の味わいや楽しみ方について、お話頂きました。

【山崎和夫講師 プロフィール】
https://www.duvin.jp/instructor/yamasaki
日本ソムリエ協会認定ワイン検定講師
ワインエキスパート/シニアワインエキスパート
SAKE DIPLOMA
SSI認定日本酒学講師
酒匠
日本酒利酒師/焼酎アドバイザー
【講座レポート】
まずは、山崎講師より、「生酒」とはどういうお酒なのか?レクチャーがありました。

1.日本酒における「火入れ(加熱殺菌)」の役割とは
ワインが基本的に加熱されないのに対し、日本酒は通常、醸造工程において2回の火入れ(約60〜65℃の低温殺菌)を行います。
・目的:
酒質を変化させる「酵素」の働きを止めるためと、腐敗を招く「火落ち菌」の殺菌が目的。酵素を残すとボトル内で分解が進み、味が甘くくどくなってしまいます。
・火入れの歴史:
フランスのパストゥールが発見する数百年も前の平安時代から、日本人は60〜65℃で数分間加熱する「低温殺菌(パストリゼーション)」を経験的に行っていました。
・火入れの方法:
伝統的な「蛇管式」のほか、フレッシュさを保つために瓶のままお湯に浸ける「瓶燗火入れ」や、シャワーで急加熱・急冷却を行う高度な設備も普及しています。
2.生酒とは?
このように一般的な日本酒では火入れを行いますが、「生酒」とは醸造工程の中で一度も火入れを行っていないお酒のこと。
●生酒の魅力
・搾りたての「鮮度」と「躍動感」:
華やかで、まるで果実のようなみずみずしい香りやフレッシュな味わいやお米本来の甘みや旨味が非常にリッチに感じられます。
・「生」ゆえの希少性と季節感:
生酒は非常にデリケートで、温度管理が難しいため、かつては蔵人しか飲めない「門外不出」の味でしたが、現在では、冬から春の風物詩として、 新酒が搾られる冬から春にかけて、「しぼりたて生原酒」として多く出回ります。そう!今が、生酒の季節です!
●生酒の管理の工夫
火入れをしない「生酒」は、酵素が働かない0度以下での保管が鉄則です。
業界では、温度と日数を掛け合わせた「積算100度日」が品質保持の限界目安とされています。
3. 「生酒」と「火入れ」のバリエーション
火入れのタイミングと回数によって、呼び名と味わいは変わります。
●醸造工程後半
上槽(搾り) → 火入れ(1回目) → 貯蔵 → 火入れ(2回目) → 瓶詰め
・生酒(なまざけ):
一度も火入れをしない。酵素が生きているため、最もフレッシュ。
・生詰(なまづめ):
貯蔵前に1回火入れ、瓶詰め時はしない。「ひやおろし」などがこれに当たり、落ち着いた
熟成感と鮮度が共存します。
・生貯蔵(なまちょぞう):
生のまま貯蔵し、出荷時に1回火入れ。フレッシュな風味を維持しつつ、ある程度の保存
性を確保します。

4. 知っておくと良い!「3つの主要な香り成分」
日本酒のキャラクターは、酵母がつくり出す「エステル(香り成分)」によっても決まります。山崎先生から主な香り成分についてもお話頂きました。
1. カプロン酸エチル(リンゴ・洋梨)
・大吟醸に多い、極めて華やかな果実香。低温発酵や高精米によって引き出されます。
・カプロン酸エチルを多く生産するように改良された酵母もあります。
カプロン酸エチル高生産酵母、セルレニン耐性酵母と呼ばれるもの
✻アルプス酵母、きょうかい1801号、明利M310酵母など
2. 酢酸イソアミル(バナナ・メロン)
・生酒の主役となる香り。穏やかで食事との相性が良く、近年のトレンドとなっています。静岡県のお酒はこの香りが優勢なのが特徴です。
・酢酸イソアミルを多く生産するように改良された酵母もあります。
✻きょうかい14号、静岡酵母HD‐1など
3. イソバレルアルデヒド(ムレ香、生老ね臭)
・生酒を0℃以上で貯蔵すると、イソアミルアルコールに酵素が働き、酸化することで
徐々に発生する劣化臭。
・湿ったキノコ様の刺激的な香り
熟成した生酒の香りでもあるので、好む人もいるが過度になると不快臭とされる
・これを防ぐには「0度以下」の徹底した温度管理、酵素の破壊(火入れ)、酵素の除去、
イソアミルアルコールを多く生産しない酵母の選択(きょうかい1801号)など

香りの試薬を香らせて頂き、どれがバナナ?リンゴは何番?など、皆さん、楽しみながらそれぞれの香りを学んでいらっしゃいました。
■山崎講師厳選の8種の日本酒を味わう!
今回、セレクトされた日本酒8種は同じお酒の通常のものと生酒の比較テイスティング。8種の日本酒を山崎先生の解説のもと、実際に楽しみながら探求していきます。

🍶1番目のお酒
菊姫 山廃仕込純米酒
生産者: 菊姫合資(石川県)
🍶2番目のお酒
菊姫 山廃仕込純米酒 無ろ過生原酒
1番と2番は、石川県を代表する銘醸蔵、菊姫が醸す「山廃仕込純米酒」。酒米の王様「兵庫県吉川産(特A地区)の山田錦」を贅沢に使用。
日本酒好きの間では「これぞ男酒」「山廃の王道」と称される、非常に骨太でインパクトのあるお酒です。
どちらにも共通する最大の特徴は、圧巻の「旨味」と「酸」。一言で表すなら、「濃醇旨口のお酒」。口に含むと、しっかりとしたコク。ナッツや黄金糖を思わせる芳醇なフレーヴァーが漂います。
[🍶生酒との違い]
1番の酒が熟成による円熟味を感じるお酒なのに対して、生酒はフレッシュだが、パンチ力を感じるお酒で少し荒々しくもエネルギッシュな野生味も楽しめるお酒。
[🍽おすすめのペアリング]
火入れは「鴨鍋」、生は「とんかつ(中濃ソース)」や「白子の天ぷら」
🍶3番目のお酒
鳳凰美田 大地 純米吟醸酒 瓶燗火入
生産者: 小林酒造株式会社(栃木県)
🍶4番目のお酒
鳳凰美田 大地 純米吟醸酒 無ろ過本生
栃木県の小林酒造が醸す「鳳凰美田(ほうおうびでん)大地」。「菊姫」が重厚な「剛」のお酒だとしたら、鳳凰美田は「華やかで優雅」な「柔」のお酒。まさに日本酒界の貴婦人のような存在。特にこの「大地」というラベルは、岡山県産の希少な酒米「赤磐雄町(あかいわおまち)」を100%使用しているのが最大の特徴です。
鳳凰美田の代名詞は、なんといっても「吟醸香(ぎんじょうか)」です。グラスから、完熟したマスカットやメロン、リンゴなどの甘く爽やかな香りが広がります。また、大地は 「酒米の祖」と呼ばれる雄町由来の、ふっくらとしたお米の甘みと、奥深いコクが共存しています。
[🍶生酒との違い]
3番のお酒は一度だけ瓶燗火入れをしたもので、香りが上品でまとまりがあり、口に含むとシルクのような滑らかさを感じるお酒。そして、4番は一切加熱せず、搾りたてをそのまま瓶詰めされているので、ガス感が少し残り、フレッシュでジューシーな味わい。こちらや冷やしてワイングラスで楽しみたいお酒。
[🍽おすすめのペアリング]
火入れは「タラのちり蒸し(ポン酢に合わせるのがポイント!)」、生酒は「柚子のカマ蒸し」
🍶5番目のお酒
会津娘 純米
生産者: 髙橋庄作酒造店(福島県)
🍶6番目のお酒
会津娘 芳醇純米生酒
これまでに挙げられた「菊姫(剛)」や「鳳凰美田(華)」とはまた異なる魅力を持つ、非常に「誠実で、日常に寄り添う名酒」です。高橋庄作酒造店が掲げる「土産土法(その土地の米・水・人で造る)」を体現した、お米の甘みが優しく広がるお酒です。
どちらのお酒にも共通する最大の特徴は、お米の「丸み」と「透明感」。また会津娘を語る上で欠かせないのは、その「柔らかさ」です。福島県会津産の「五百万石」を使用し、自然で上品な甘みが感じられ、後味をスッと切らせてくれる綺麗な酸があり、今風の純米酒。
[🍶生酒との違い]
会津娘は、火入れ(加熱処理)の技術が非常に高く、通常版でもフレッシュさがありますが、「芳醇純米生」はさらにその上を行きます。
5番のお酒は、酢酸イソアミル由来の香りが広がり、口に含むと落ち着いた旨味があり、バランスの抜群。対して6番のお酒は華やかで、マスカットやバナナのような爽やかさで甘やかな香り。口当たりまろやかクリーミー。
[🍽おすすめのペアリング]
火入れは「エビフライ(タルタルソース)」、生酒はクリーミーさを活かし、「生牡蠣(レモンなし)」

🍶7番目のお酒
超王祿 純米60% 生詰(1回火入れ)
生産者: 王祿酒造(島根県)
🍶8番目のお酒
超王祿 純米60% 直汲(完全な生酒)
島根県の名門、王祿酒造が醸す「超王祿」。日本酒好きの間では「王祿を語らずして地酒を語るなかれ」と言われるほど、独自のこだわりと強烈な個性を持つブランド。
お酒の品質管理(特に温度管理)に並々ならぬこだわりを持っているため、蔵が認めた全国で30〜40店舗ほどの「特約店」でしか販売されていないお酒です。
●超王祿 純米60% 生詰(1回火入れ)
こちらは、一度だけ火入れを行い、瓶内で熟成させたタイプです。 王祿らしい「しっかりとした酸」と「凝縮した旨味」、それでいてキレが良く、そのバランスが絶妙です。
●超王祿 純米60% 直汲(生酒)
こちらは、搾りたてをそのまま瓶に詰め、一切の加熱処理をしない「完全な生酒」です。口に含むと鋭い酸がダイレクトに伝わり、非常にドライ(辛口)でシャープな印象。生酒特有の濃密な風味が共存しています。
[🍽おすすめのペアリング]
1回火入れは「たらのちり蒸し(ポン酢に合わせる)」、生酒は「柚子の釜蒸し」

日本酒のバリエーションの広さを再発見した、個性豊かな8種のラインナップ。
今回のセミナーを通じて、ご参加いただいた皆様に、生酒ならではの生き生きとした美味しさが存分に伝わったのではないでしょうか。
分かりやすく、かつ奥深いお話を聞かせてくださった山崎先生、
そして、ご参加下さいました受講者の皆様、本当にありがとうございました。

■スクール事務局より
「日本酒Lover講座」は、日本酒ワインファンの皆様、そして、好きだけれど、あまり詳しくない皆様にも、日本酒の今を知る新しい日本酒や、伝統を知ることができる日本酒、そして、生産者を知って頂き、日本酒との素敵な出逢いになる講座になっております。
- 3月開催の日本酒Lover講座のテーマは、「熟成酒の味わいを識る」
講師は、日本酒講師としてだけでなく、飲食店のアドバイザーやイベント運営など幅広く活躍されている戸田明子講師。全国90以上の酒蔵を巡り、各地の歴史や風土を深く知る戸田講師が、奥深い熟成酒の魅力について存分にお伝えします。
・開催日時:
2026年3月13日(金)19:00-21:00
渋谷校開催
・講座お申込みはこちらから
https://www.duvin.jp/event/2801
是非、お気軽にご参加ください。